商品が売れる理由は、一つではない。商品の特徴を知らせる広告があり、同じ商品を違う意味に見せる表現があり、手に取りたくなる形を考えるデザインもある。
広告人と工業デザイナーは同じ職業ではない。だが、買い手が何を見て、どう判断し、なぜ欲しくなるのかに向き合う点では接点がある。ここでは伝え方を変えた3人と商品のあり方を変えた3人を並べ、違いを見ていく。
広告の「伝え方」を変えた人
クロード・ホプキンス――売れたかどうかを確かめる
クロード・ホプキンスは、クーポン、無料サンプル、地域テストなどを使い、広告の反応を調べた。広告を直感だけに頼らず、実際の販売と結びつけて判断する姿勢が特徴だ。測定できる広告の歴史を知りたいなら、まずこの人から読むとよい。
デイヴィッド・オグルヴィ――調査をブランドの言葉に変えた
デイヴィッド・オグルヴィは訪問販売や調査の経験を経て広告会社を立ち上げた。顧客と商品を詳しく調べ、具体的な事実を記憶に残る表現へ変える。商品の特徴を伝えることと、ブランドの個性を育てることを両立させようとした。
ビル・バーンバック――商品の弱みに別の見方を与えた
ビル・バーンバックは、コピーライターとアートディレクターを組ませ、言葉と視覚表現を一体で考えた。フォルクスワーゲンの広告などで、隠したくなるような特徴を新しい価値に変えた。売るための論理だけでなく、見る人の認識を変える仕事に関心があれば入口になる。
商品の「あり方」を変えた人
レイモンド・ローウィ――新しさを受け入れられる形にする
レイモンド・ローウィは複写機から鉄道、自動車、包装まで手がけた工業デザイナー。新しさと親しみやすさの間を設計しようとした「MAYA」という考え方で知られる。広告ではなく、商品が目の前に現れたときの判断を考える人物だ。
ブルックス・スティーヴンス――「次が欲しい」をどうつくるか
ブルックス・スティーヴンスは家具・家電・自動車などのデザインに携わった。「計画的陳腐化」という言葉を用い、まだ使える商品でも新しいものを欲しくなる仕組みを語った。売れることと、長く使うことの間にある緊張を考えるために読みたい。
ディーター・ラムス――新しくし続けることに疑問を向けた
ディーター・ラムスはブラウンやVitsœの製品を通じて、整合したデザインの考え方を示した。やがて、過剰な消費や資源の使用にも目を向ける。スティーヴンスと並べると、商売のためにデザインが何をするべきか、答えは一つではないと分かる。
どこから読めばよいか
広告効果の測定が気になるならホプキンス。ブランドと表現ならオグルヴィ→バーンバック。商品の造形や売れ方を考えるならローウィ→スティーヴンス→ラムス。
「良い広告」と「良い商品」は同義ではない。だからこそ両方の歴史を行き来すると、デザインと商売の関係が少し立体的に見えてくる。





