有名な経営者の話には「天才がひらめき、一人で会社を成功させた」という筋書きがつきやすい。だが、企業をつくるとは、アイデアを思いつくだけの仕事ではない。資金を集め、人と働き、作る方法を変え、商品を届ける場所をつくることでもある。
ここでは発明家、金融・実業の担い手、製造業の経営者など、違う方法で産業に関わった7人を紹介する。成功を模倣するためのランキングではない。功績の裏にある衝突や欠点も含め、何を変えようとした人なのかから読みたい。
事業の仕組みをつくった人
渋沢栄一――個人の仕事から企業の制度へ
渋沢栄一は幕末の政治運動や官僚生活を経て、銀行を軸に多くの企業を育てる仕事へ進んだ。「日本資本主義の父」という肩書きだけでなく、事業を一人で所有するのではなく、人や資本を組み合わせる方法に目を向けたい。
広岡浅子――事業と女子教育を結びつけた
広岡浅子は実業家であり、教育活動にも取り組んだ。商売をすることと、社会の中で女性が学び働く条件を変えることが、必ずしも別の話ではない。その二つを重ねて読む入口になる。
トーマス・エジソン――発明を事業に変えた
トーマス・エジソンは研究開発のための設備と技術者を集め、白熱電灯を発電・配電まで含む仕組みへ変えていった。最初に電球を発明した人という単純な紹介よりも、発明を社会で使えるようにする仕事から読むと面白い。
工場と製品を広める仕組みをつくった人
ヘンリー・フォード――大衆車をつくる生産体制
ヘンリー・フォードは自動車そのものの発明者ではない。T型フォードと生産の仕組みを通じて、自動車が手に届く人の範囲を広げた。一方で従業員への監視、労働運動との衝突、反ユダヤ主義宣伝など、経営の負の側面も残している。
マルガレーテ・シュタイフ――小さな製品をブランドへ育てた
マルガレーテ・シュタイフは玩具製造の事業を築き、現在まで名が残るブランドにつながった。巨大な工業製品や工場の話とは違い、身近な商品へのこだわりと事業の持続を考える入口になる。
本田宗一郎――機械への関心をものづくりの仕事にした
本田宗一郎は機械や自動車への強い関心から、後にホンダへつながる仕事を始めた。技術者としての感覚が企業経営にどう関係したのか。製品の歴史と働く人の歴史を一緒に読みたい人物だ。
製品と企業の価値の伝え方を変えた人
スティーブ・ジョブズ――一人の物語の後ろにある共同制作
スティーブ・ジョブズはアップルの共同創業者としてマック、iPod、iPhoneなどの製品に関わった。ネクストやピクサーでの仕事も含めると、一度の成功では説明できない。本人の有名なスピーチと、多くの共同制作者がいた実際の企業史の両方を見たい。
どこから読めばよいか
制度や資本の集め方を知りたいなら渋沢栄一。事業と社会活動なら広岡浅子。発明と製品化ならエジソン。大量生産の功罪ならフォード。小さな商品のブランドならシュタイフ。技術者からの起業なら本田宗一郎。製品と企業の物語ならジョブズ。
企業をつくる仕事には、一つの成功法則ではなく、異なる選択と代償がある。それを人物伝から知るための7人だ。






